数々の恋愛ソングを世に放つ、恋愛のバイブル、aiko。
その中でも、私的に、最もシンプルでありかつ、最も恋愛の真理をついていると思う、この曲。
シングルで出ているわけでもなく、テレビやライブでよく歌われるわけでもない。極力、aikoのそのままの歌声とシンプルな伴奏で構成されたどちらかというと地味な曲です。
でも、私はこの曲こそがaikoの表す恋愛観を最も感じられるものだと思っています。
ただ、あなたが好き。それだけ。
歌い出し。
ただ あなただけ
ひとつだけ この気持ちはここにしかない
曲を聴いてもらうとわかるのですが、この曲は、イントロなしでaikoの声から始まります。「ただ あなただけ」という言葉を、aikoはとてもとても慎重に歌っています。
いつもの、あなたへの強くまっすぐな気持ちがあらわれたような力のある声ではなく、むしろ少し弱弱しく、かすれてしまうんでないかというくらいの慎重さで歌い始めるんです。
そこには、「ただ あなただけ」という決意にも近い言葉にともなうaikoの隠れた不安が見える気がします。
もう少し歌詞を見ていきましょう。
昨日も今日も夢に出てきた
あなたはしっかり笑顔でいた
少しだけ手を繋いでみたら
当たり前のように握り返した
冒頭ワンフレーズのあとこう続きます。そして、
このまま一生離したくない
尊い今をあなたといたい
冒頭の不安が見え隠れする歌い方とは一変、ここまででかなり強い気持ちがあふれるように歌声に乗って流れ出てきます。
そしてそのままの勢いでサビへ。
ただ あなただけ
ひとつだけこの気持ちはここにしかない
ただ あなたが好き
苦しみも重ねて ただそれだけ
ひたすらに、ただ あなただけ、と繰り返す。
先ほど言った、”「ただ あなただけ」という決意にも近い言葉にともなうaikoの隠れた不安”を、打ち消すように、大丈夫だと、言い聞かせるように繰り返す。
その不安はいったい、なんなのか。
私的に思うのは、
”ただ、あなただけがいればいい”というこの曲の肝になる部分自体が本当はすごく心もとないものでとてもとても不安なものなんじゃないかなって。
だからこそ、aikoは慎重にこわごわしく歌い始め、言い聞かせるように、だんだん強く、強く、魂のこもったものに変化し、繰り返し繰り返し歌うんじゃないでしょうか。
aikoの言う、”それだけ” とは、“苦しみも重ねて” です。
aikoがその目にみるものは、ただ、あなただけ。ですが、日常には、あなた以外のことももちろんあるわけで。
それは、元カノかもしれないし、女友達かもしれない。旧友からの思いがけない連絡かもしれないし、急な飲み会のお誘いかもしれない。
そんな、色々なものがあたしとあなたの間を流れていく。いろんな感情や不安が生まれてくる。
それでも、aikoは、「ただ あなただけ」「ただ あなたが好き」
生まれる不安と揺らぎの中で、それだけがあればいい。そう言っているんです。そんなたくさんのあふれる気持ちを、「苦しみも重ねて ただそれだけ」というワンフレーズに込めているんです。
(と、私は思って聞いています。)
私も含め、多くの女の子が、色んな事で不安になって、こらえきれなくなって泣いてしまったり、ぶつけてしまったりすることがあるんじゃないでしょうか。
でも、本当は、”私があなたを好きだという気持ち”と”あなたが私を好きだという気持ち””それだけ”があれば充分なはずで。aikoもそう歌っているんだと思う。
でもやっぱり、不安は生まれてくるし心細いときだってある。そんな、不安定で、でもすごくおくゆかしい、純粋な女の子の気持ちを、この、「それだけ」という楽曲は、純度高いまま表してくれている気がして大好きなんです。
このあたりは、「秘密」という楽曲にも通ずる部分がありますが、長くなりましたので今回は、この辺で。
他にもaikoの曲や恋愛について勝手につらつら熱弁している記事があります。よかったらこちらもどうぞ。