こんにちは。aikoジャンキーのけだまです。
今回は、シングル「あたしの向こう」のカップリング、「ドライヤー」という曲について
私なりの考察や感想、好きなところを紹介していこうと思います。
日常の隙間にあなたのかけらをみつける
私はもう何年もaikoを聞き続けていて、もちろんカップリング曲も含め
おそらくaikoがこの世に出している楽曲の90%は必ず一度は耳にしているはずですが
いまだに驚くのが、”うわ、この曲こんなこと言ってたんだ…”という衝撃が何度でも起こることです。
その時の自分の気持ちや状況によって、何度でも新しい衝撃に出会える曲があるんですよね…。
今回はちょうど最近、その衝撃の走った”ドライヤー”を取り上げます。
もう冒頭のしつこくて強いフレーズを刻むギターから気持ち入っちゃいますよね。(笑)
歌詞を見ていきましょう
テーブルに置かれた丸まったバスタオル
あんなに邪魔だったのに今は愛おしいな
少しバカになったドライヤーで今日も髪の毛を乾かすよ
テーブルに置かれたままのバスタオル。
よくある光景、日常。
それが当たり前に日常だったときは、片付け癖のないあなたに対して
しょうがないなあと、ため息をついていたのでしょうか。
でも、それが今は愛おしい存在(=もう当たり前ではない存在)になってしまった。
日常ではなくなってしまったことを、おかれたままのバスタオルで実感してしまう…。
いつも一緒にいた人との別れは、案外その瞬間よりも
日常にまぎれた記憶のかけらやにおいに急に実感させられたりするものです。
そんな瞬間を、純粋に切り取ってくれたような言葉選びだなあと、
私はドライヤーの冒頭を聞くたびに思います。
でも、そんなあたしにとっての”非日常”な状態でも、
当たり前に明日は来て、日常をやり過ごしていくしかない、そんな様子が
”少しバカになったドライヤーで今日も髪の毛を乾かすよ”、の部分。
あなたが居なくなったら
そして続く歌詞はこちら。
あなたが居なくなったら
寂しくてきっと生きていけなくなるって言うと必ず
そんなことないよって笑ってあなたは言ったけどもう消えてしまいそうです
いいえもう消えてしまったようなものなのか
今日も髪の毛を乾かして、あなたのいない非日常の日常をこなすあたし。
でも、それはただ日々をこなすだけであって、あたしはもう消えてしまったようなもんなんですと歌います。
あなたのことを好きで、愛して、その時間を愛おしいと思ったあたしはもういない。
あなたと一緒に消えてしまった。
ここにあるのはただの空っぽの自分。そんなニュアンスを感じます。
あたしの存在意義は、あなたを想うことにあった、と言っても過言ではないくらいの言葉選びですよね。
というか、もうこのドライヤーのあたしは、そうだと断言してもいいんじゃないでしょうか。
あたしの肉体は生きているけれど、あなたのいなくなったあたしは、もう死んだようなもんなんですよ。
わかるなあ…。
それだけ本当に、あなたがあたしだったんですよね、きっと…。
そしてサビへ
いつも何かを忘れていって
あれやこれやを見る度に思いだすんだよ
あなたのくれた本の包み紙も
何故かずっと捨てられなかった
サビのメロディーの切なさたるや…。
どれだけあたしはあなたのことを想っていたのか、
好きとか愛してるとか言葉がなくても、重たいほどに伝わってくる。
空っぽのあたしに毎日襲ってくるものは
ただの本の包み紙だったり、ただのバスタオルだったり
日常そのもの、なんですね。
痛い。純度が高すぎて胸が痛いよ、aiko。
そんなことも全部全部、全てだったよ
少し飛ばして二番サビを読みたいです。
いつかのあなたの右手が
凍える夜中から連れ出してくれたんだよ
嘘の混じった優しい言葉に
嘘の混じったあたしの笑顔
そんなことも全部全部 全てだったよってこの部屋に集めて
少しバカになったドライヤーで
ねぇもう一度乾かそうよ
私はここの二番サビが大好きでたまりません…。
一番で、あたしの存在意義はあなたにあった、と書きましたが
それがこの二番サビで、まんま歌われていますよね。
”嘘の混じった優しい言葉”、”噓の混じったあたしの笑顔”
心の底からの愛の言葉じゃないと、わかっていながら。
それでも。それが、それこそが、全部全部、全てだったよって。言うんですよ。
全てって、あたしの全て、ということだと思うんです。
本当に、全て。
あたしの気持ちも、時間も、体も、日常も、あたしという存在も、
それが全てだったんです。
ここのaikoの歌い方からも、全部ひっくり返して全て、と言わんばかりの
切実さというか、ある意味執念チックな熱量を感じますよね。
本当の愛や恋じゃないって、わかっていながらも、
それでもそんな見せかけのものでも、あたしにとっては全てだったんだ。
側に居ても寂しかったのに
そしてラスサビへ。
涙が出るほど愛してる
指を這わせ抱き寄せて頬を刺して
二番サビで歌った、”全て”がここで再度強いはっきりとした言葉で表現されていますよね。
私はこのフレーズで、”全て”の重みでもう一度頭を殴られたような感覚になって
毎回泣いてしまいそうになります。
1トンはあります、このフレーズ。
そして最後のとどめ。
側に居ても寂しかったのに
側に居ても寂しかったのに
あたしは、ずー-----っと、
あなたの側に居る時から、
ずっと寂しかったんだって、最後に二回も繰り返して終わります。
嘘の混じった言葉でも、嘘のまじった関係でも
あたしの全てだったあなたとの時間。
でも、側に居たあの日々でも
本当はずっと寂しかったんだって。
このフレーズが最後に来ることで、
あたしが言った、それでも全てだった、という言葉が
どれだけ切実だったか、を聞き手に焼き付けるように印象付けますよね…。
偽りの言葉や関係でも、側にいたって寂しい気持ちばかりだった日々でも
それでもあたしにとっては、涙が出るほど大切でそれこそがあたしの全てだったんですね。